海外旅行で、貧しい田舎町に行き、素朴な人々に会うと、
こういう人たちがまだ世界にはいるんだなあと心が温かくなるのですが、
一方で、こういう人たちが急に金持ちになったりしたら、誘惑への免疫が無い分、
人間性がガラリと変わってしまうんだろうなあと思ったりしていました。
そしてこの本を読んで、その思いは確信に変わりました。
『ユートピアの崩壊 ナウル共和国〜世界一裕福な島国が最貧国に転落するまで』
オーストラリアから約4千キロ離れた、太平洋に浮かぶ島国ナウル。
人口わずか1万人(2006年時点)の小さな小さな国です。
海で魚を釣ったりしながら、素朴に静かに暮らしていた国民の暮らしは、
この島で、貴重な天然資源であるリン鉱石が見つかったことから、激変します。
リン鉱石の発掘は、中国や周囲の島国から来た出稼ぎに任せ、
ナウル国民はそのほとんどが公務員となり、リン鉱石の発掘ビジネスで入ってくる
有り余る税金を使って世界中を旅し、遊びまくります。
島を30分で一週する道を何度もグルグル回るため、高級車を何台も買い漁り、
食料は全て輸入品となり、肥満率がどんどん高くなっていきます。
この頃、ナウル国民の1人当たりGDPは、
中東の産油国と並び、世界トップクラスだったそうです。
ナウル政府も、リン鉱石マネーを使って海外の高級リゾートホテルを買い漁り、
採算が全く取れない空港を作って路線を次々と増やし、湯水のように金を使っていきます。
そして数十年後、リン鉱石が枯渇します。
バブルははじけ、ナウルはどん底に突き落とされます。
リゾートホテルの改築は途中で止まり、飛行機は差し押さえられ、
国の中央銀行であるナウル銀行は潰れます。
借金だけが雪だるま式に増えていく中で、ナウルは生き延びていくため、
違法行為に手を染め、タックスヘブンとなってマネーロンダリングビジネスを始めます。
(その後、米国に怒られ、ナウルは非合法なビジネスから足を洗います。)
まるで誰かの人生を見てるかのような栄光と転落の物語でした。
書評担当:175