
罪が重く懲役期間が長期であり、かつ犯罪傾向が進んでいる者が収容される
LB級刑務所は、全国で5ヶ所しかありません。
そのひとつに収容されている、2件の殺人を犯した男が獄中で綴った
手記を纏めた1冊です(もちろんノンフィクションです)。
『人を殺すとはどういうことか』
著者の美達(仮名)は、極度に高いIQの持ち主であり、
裁判時の性格鑑定でも、ベテラン鑑定人からこんな評価を受けています。
「当職は30年の職歴の中でこのような奇跡的な知能レベルに遭遇するのは
初めてであり、他の症例を調査しても前例がないことである。」
殺人を犯す前、美達は社会で次々と成功を収め、莫大な金を稼ぎます。
その天才的な頭脳に太刀打ちできる者はなく、美達は常に論理的に正しいため、
全能感を持つようになります。この全能感と、美達の極端に真っ直ぐな性格が、
その後の殺人事件を引き起こすことになります。
そして刑務所で10数年を過ごした美達が辿り着いた(まだ途上だけど。)
罪との向き合い方に、ぼくは共感できました。
(特に、生きている加害者よりも、死んだ被害者のことを優先して
考えるのが当然という考え方はその通りだと思います。
法律をちょっとかじったような人には、この当然の考え方を分かって
いない人も多いのです。)
また、同じ刑務所内にいる殺人犯(悪魔も取引を拒むような魂を持つ者や
本物の侠(おとこ)を感じさせるヤクザ(※存在自体が反社会的ですが。)
など)へのインタビューや、一般の社会がこれらの犯罪者たちと
どう付き合っていくべきかについての美達の考え方を読むと、
いろいろ考えさせられます。
そもそもこんな殺人者が書いた本を読むこと自体が不謹慎という考え方も
あると思いますが、個人的にはこの本を読んで良かったと思います。
書評担当:175
