
『学問のすすめ』
こんな面白くなさそうな名前の本を読むことは一生無いと思っていたのですが、
最近はまっている“まんがで読破”シリーズにあったので、
全く期待しないで読んでみました。
そしたらこれがめちゃくちゃ面白かった!
といっても表題の『学問のすすめ』部分ではなく(この部分はフーンというくらいの感想)、
この本の約7割を占めている『福沢諭吉物語』がとても面白かったのです。
諭吉さんは、例えるなら、米国のメジャーリーグに最初に単身乗り込んでいった
野茂英雄みたいな人だったんですね。
当時の最先端の国であり、強国であったオランダの学問を学ぶため、
大阪で緒方洪庵が開いていた適塾の門下生となり、頭角を現して塾生長になり、
江戸に派遣されて築地に蘭学塾(後の慶応義塾)を開いたのが、福沢諭吉23歳のとき。
得意のオランダ語で世界を渡り歩いてやろうと考えていたところ、時代は変わり、
世界は英語がスタンダードになっていて愕然とするのですが、また一から英語を学び始め、
1860年、勝海舟らと共に咸臨丸に乗って米国へ行きます。
その後、欧州も訪問し、帰国後、尊王攘夷の嵐が吹き荒れていた当時の社会の中で、
欧米の社会や政治を紹介する『西洋事情』という本を出版し、日本の文明開化の流れを
推し進めます。
こんなに気骨のある人だとは全然知りませんでした。
それにしても、自らが下級武士の出身だったため、いわれのない差別に苦しみ、
この差別と戦い、その結果、「天は人の上に人を造らず」という思想に辿り着いた
福沢諭吉が設立した学校が、今では特権階級や金持ちのための学校(特に幼稚舎?)に
なってしまっているのは、何とも皮肉な話しです。
書評担当:175
