2007年03月21日

樵(キコリ)通信その3

s-hentai.jpg

ある日、僕がグランドキャニオンの山頂で岩を砕いていると、遠くからヴィトンのカ
バンを抱えた女子大生(たぶん)が二人やってきた。

その日は観光客も少なく絶好のグランドキャニオン日和で、いつもは霞んでしまう遠
くの景色まで見渡すことができる。
こんな日に来れるなんて二人ともラッキーだなーと思いつつ、もう少し近づいてきた
ら何と話しかけようか、と考える。

「今日もコンドルがよく飛んでますねぇ」

「あそこの谷の部分、少し牛に見えませんか」

・・・相変わらず今ひとつだ。
あれこれ考える間もなく、二人の会話が聞こえてきた。

A子「・・・系じゃない?」

B子「えぇー?・・・っちゃう?」

とても早口で話している上、作業しているクルーは完全に視界に入っていないらし
い。
二人で谷底を指差しあっては、何か話している。
僕は話しかけるよりも、彼らの会話を聞くことにした。

A子「えー!これ撮っちゃう系じゃない?それ系じゃない?」

B子「マジそれ。You、撮っちゃいなよ」

A子「これ、深すぎ!何?写真撮れない系じゃない?」

B子「ていうか、A子ホント似てるよね。それよりも、あの道登るのマジでウザイんだ
けれど」

すみません。そのトレイル作ったの自分です・・・
日本人が周りにいないと思っているらしく、彼らのテンションはやたらと高い。
A子は誰かの物真似をしているらしかったけれど、誰なのか結局分からなかった。

そんな彼らが帰ろうと折り返すところで、ふと目が合ってしまった。
その瞬間、なぜだか自分が日本人だと悟られるわけには行かない、という強迫観念が
沸き起こり(なんでそう感じたのか分からないが)、僕はできるだけ滑らかな英語
で、アメリカ人ぽく挨拶をしてしまった。
もちろん、彼らはほかの日本人同様無言で会釈をし、しかも自分が少し日本人ぽいた
め、ヒソヒソと話しながら帰って行く。

ああ、日本語で思いっきし

「トレイルを登るのが嫌なら降りてくるんじゃねー!」

と叫びたかった。


樵通信担当:変態タツ

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posted by 175 at 11:14| 東京 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | 特派員レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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